近年増えている「明るいお葬式」や「お別れ会」。故人の人生を祝福し、笑顔で見送るというコンセプトは非常に素晴らしいものですが、いざ参列する側になると、その振る舞い方に戸惑う方も少なくないでしょう。厳粛な場でのマナーとは異なる、新しい心の持ち方が求められます。まず、最も大切なのは「ご遺族の想いを尊重する」という姿勢です。このような形式を選んだ背景には、故人の遺志や、ご遺族の「故人らしく送りたい」という強い願いがあります。その気持ちを汲み取り、主催者の創り出す雰囲気に、柔軟に心を合わせることが基本となります。服装については、案内状に「平服で」と指定がない限りは、通常の葬儀と同様に喪服を着用していくのが最も無難です。明るい雰囲気とはいえ、弔いの場であることに変わりはないからです。香典も、辞退の申し出がなければ、通常通り「御霊前」として持参します。会場で、故人の好きだった明るい音楽が流れていたり、思い出話に笑いが起きたりすることもあるでしょう。その際に、無理に神妙な顔をし続ける必要はありません。温かい思い出が蘇り、自然と微笑みがこぼれるのであれば、それもまた故人への供養となります。ただし、大声で騒いだり、お酒を飲みすぎたりといった、節度を欠いた行動は厳に慎むべきです。ご遺族にお悔やみの言葉をかける際には、「この度はご愁傷様です」といった決まり文句と共に、「〇〇さんらしい、本当に温かいお式ですね」「楽しかった思い出がたくさん蘇ってきました」といった一言を添えると、ご遺族の想いに寄り添う気持ちが伝わります。悲しむべき時は悲しみ、偲ぶべき時は偲ぶ。そして、故人が遺してくれた人生の喜びを分かち合う。そのメリハリをつけた心の持ち方が、新しいお別れの形にふさわしい、参列者のマナーと言えるでしょう。