葬儀の際、故人が愛用していたものや好きだったものを棺に納める副葬品。この行為は、単に現世からあの世への持ち物を用意するだけでなく、残された遺族にとって非常に大切な意味を持っています。副葬品を選ぶというプロセスそのものが、故人との別れを受け入れ、悲しみを乗り越えるための一助となることがあるのです。副葬品を選ぶ時間は、故人との思い出を深く振り返る時間でもあります。「あの人はこれが好きだったな」「これは一緒に旅行に行った時のだね」と、一つ一つの品物を通して故人の人柄や共に過ごした日々を再確認します。何を納めようかと考える中で、故人との繋がりを改めて感じ、故人が自分たちの生活の中でどれだけ大きな存在だったかを噛みしめることになります。また、副葬品を棺に納める行為は、故人に対してできる「最後の世話」とも言えます。旅立ちの準備を手伝うという行為は、遺族にとって故人への愛情や感謝を形にする機会であり、何もできなくなるという喪失感の中で、故人のために何かできたという達成感や満足感を与えてくれます。これは、悲しみを整理し、少しずつ現実を受け入れていく「グリーフケア」の一環となり得ます。もちろん、火葬できないものは納められないという制約はあります。しかし、その制約の中でも故人を思いながら品物を選ぶ行為、そしてそれを棺に納めるという物理的な行為は、遺族の心に区切りをつけ、前を向くための助けになることがあります。副葬品選びは、故人を偲び、自分自身の心を整えるための大切な時間と言えるでしょう。