ノーネクタイが許される特別な場合とは
葬儀においてノーネクタイは原則としてマナー違反ですが、すべての状況で絶対に許されないというわけではありません。ご遺族の意向や、特定の状況下においては、ノーネクタイでの参列が許容される、あるいは推奨される特別なケースが存在します。まず、最も明確なのが、ご遺族から「ノーネクタイでお越しください」という案内があった場合です。これは、記録的な猛暑の中での葬儀で参列者の健康を気遣ったり、故人が生前、堅苦しいことを嫌う人柄であったりした場合に、ご遺族の配慮として伝えられることがあります。案内状に明記されている場合や、当日の会場でアナウンスがあった場合は、その意向に従うことが、むしろご遺族への思いやりとなります。ただし、その場合でも、ワイシャツの第一ボタンはきちんと留め、だらしない印象を与えないように心がけましょう。次に、「平服で」と案内された場合です。この「平服」とは、普段着のことではなく、略喪服を指します。男性であればダークスーツを着用しますが、この場合、ネクタイは黒無地のものを着用するのが一般的です。自己判断でノーネクタイにするのは避けた方が無難です。また、「お通夜ならノーネクタイでも良い」という考えは、基本的には誤解です。確かに、急な訃報に仕事先から駆けつける場合など、やむを得ない事情があれば大目に見られることもありますが、それはあくまで例外中の例外。事前に連絡を受けて参列するお通夜では、告別式と同様に、きちんとネクタイを締めていくのが正式なマナーです。どのような状況であれ、基本は「ネクタイ着用」。ご遺族からの明確な指示があった場合にのみ、その温かい配慮に甘えさせていただく、という謙虚な姿勢が大切です。